おどるの好き好き
マダガスカルですね。
そんなマダガスカルに似た名前の植物、アスパラガスのお話し。
昔々、あるところに野生のアスパラガスがいました。
それはイタリアのエウガネイでした。
3月18日(サン・ジュゼッペ)から5月までしか買えないとても美味しい貴重なアスパラガスでした。
苗をさがせど見つからない、種をさがせどみつからない。
そこで大魔王様は思いました。
そうだ!この野菜の野生のアスパラガスから苗を作ればいいんだ!
そして大魔王様はアスパラガスを切り刻み細胞を培養しました。
これで勇者もひとたまりもないだろう。
実は輪切りと芽の細胞の二通りを試していましたが、輪切りは芽が成長するものの根が出ませんでした。
ところが芽の細胞はいきなりカルスが形成され、しだいに根と芽が同時に生まれました。
そう、カルスとは人間でいうとIPS細胞やスタップ細胞みたいなもので
多能性をもつ植物細胞のことです。
多能性というよりカルスから1個体全てが再生されるため全能性という表現が正しいかもしれません。
ただアスパラガスは貯蔵根、鱗芽群の2つが揃わなければ冬を越すことが出来ません。
培地の劣化に合わせて2〜3ヶ月に一度培地を取り替え、6ヶ月以上の培養が必要だと考えられます。
そんなエウガネイ産野生アスパラガスも日が経つにつれ成長し、普通にアスパラガスに見えるまで育ちました。
でもなんかおかしい。
本当にこいつはアスパラガスなのだろうか?
根はアーユルヴェーダのハーブ
シャタバリのようだ。
シャタバリは女性のホルモンバランスを整えるとも言われる薬草だがAsparagus racemosusというれっきとしたアスパラガスの仲間だ。
だがしかしシャタバリみたいに葉が平たくなく、なんならちょっと刺さるくらいには硬い
お主!何者じゃ!!
そう思っていると
イタリアからクロアチアまでの地域ではよく野生のアスパラガスが利用され、
それがAsparagus acutifolius だということがわかった。
acutifolius とはトゲの葉という意味だそうでどうりでチクチクするわけだ。
そうして正体がわかりしイタリアはエウガネイの野生アスパラガスを利用して品種改良をし、この素晴らしい味を受け継いだ栽培アスパラガスを作ろうと心に誓ったのでした。
めでたしめでたし。
アスパラガスの話し後日譚
長ネギの再生栽培をする主婦を真似てイタリアの野生アスパラガスの再生栽培をしてみたが実は国内にも野生のアスパラガスがある。
その筆頭がキジカクシだ。
アスパラガスの和名はオランダキジカクシというが、オランダでないキジカクシのことである。
まず味見をしてみると、甘味があり風味も良いアスパラガスだが
頭が出て8センチ程度になるとすでに硬くなってきている。
日本で一般的に利用されなかったのは希少であること以外に硬くなりやすいことが関係しているかもしれない。
そこで、アルミを巻いたトイレットペーパーの芯をキジカクシの芽に被せ、しばらく待ってホワイトアスパラガスにしてみた。
やはりホワイトアスパラガスにすると柔らかいままのようだ。
ヨーロッパではホワイトアスパラガスが古くから作られてきたが、古くにアスパラガスの野生種を栽培していた時代に、硬くなりやすい野生種を軟白栽培して柔らかいホワイトアスパラガスにして利用していた文化が今も受継がれてきたのかもしれない。
ちなみに画像はイタリアの最高級アスパラガス、バッサーノだが現在の日本で主流アスパラガスとは異なり昔の品種と同じく苦味がある。
バッサーノもエウガネイと同じくサン・ジュゼッペの日(3月18日)からだが、6月13日のサン・タントニオの日までなのでエウガネイより手に入る期間は長い。
日本でよくテレビにうつる栽培方法のホワイトアスパラガスは遮光するだけのものだが、バッサーノは土を高く盛りその上に黒シートを被せる。
そしてアスパラガスがシートに達したら収穫する。
それゆえ最も土の違いが出る野菜として珍重されるのだ。
日本でも同じ栽培方法のホワイトアスパラガスがあるので、遮光しただけのものと食べ比べてみるのも面白いだろう。
話は戻るが、キジカクシはアスパラガスほど芽が旺盛に出ないため消滅しやすい。
栽培するなら出来れば毎年様子をみて植え替えてやるのが良いだろう。
うちのキジカクシはオスだが、アスパラガスはオスの方が芽が出るためほぼオスしか生まれない品種が多くなっている。
代表的な品種でいえばゼンユウヨーデルのゼンユウは全雄という意味だ。
だがオスでこの程度しか芽が出ないキジカクシの場合メスはもっと少ないと考えると
そりゃ絶滅危惧種になるよなとは思う。
そしてうちにはもう1種野生アスパラガスがある、それがハマタマボウキだ。
これはTwitterで今は亡きロロさんに送って頂いたものだ。
(追記−4/2日現在ロロさんTwitter復活しました。)
ハマタマボウキはアスパラガスの天敵である茎枯病に耐性があるとかですでに交配に利用されているが、見た目はキジカクシよりも栽培アスパラガスにかなり近い。
旺盛なところも似ているため、最も栽培アスパラガスに似た日本の野生のアスパラガスといえる。
そんな今は亡きロロさんにもらったハマタマボウキ、識別名ロロロッドは一本メスだったのでキジカクシで受粉してみた。
するときちんと受粉し、果実が肥大したのだ。
アスパラガスも容易に交配できることがわかった。
そしてキジカクシで受粉したハマタマボウキのロロロッドの果実は糖度24.6もあった。
種子をとり、残った果実を食べてみると
味はアンコだった。
アスパラガスの果実は鳥が食べるのかもしれない。
キジカクシは関東にも生えており、日本の赤土に適応したアスパラガスと言えるだろう。
ハマタマボウキは海岸性で塩害などにも強そうだ。
雑種がどうなるかは分からないが、育てば栽培アスパラガスと交配してみたいと思う。
日本でいえば野生アスパラガスのクサスギカズラAsparagus cochinchinensisの果実は赤く色づかないが、
野生アスパラガスのエウガネイもAsparagus acutifoliusだとしたら果実は赤く色づかないはず。
アスパラガスには果実が赤くなる野生種と赤くならない野生種の2タイプがあるが、赤実タイプと緑実タイプの交雑は可能なのだろうか?
栽培アスパラガスはキジカクシやハマタマボウキ同様に赤くなるタイプだが
別タイプと交配が可能かが今後の課題ですね。