メロンの交配、品種改良のこれまで

メロンの交配、品種改良のこれまで

メロンというと高級果物のイメージがある。中にはバカ高いと思っている人もいるだろう。

ただ、それだけ手間がかかっている。

でもそれで良いのだろうか?

庭でハツカダイコンを作るが如くチョチョイと作れる作物になってはいけないだろうか?

そう思ってメロンの改良をはじめた。

メロンの栽培にはいくつか壁がある。

まずはツル割れ病だ。

この病気は品種によって感受性が異なるが、かかると枯れるか育っても糖度が上がらない場合が多い。

次にウイルスがある

ウイルス病にかかると芽の伸びが悪くなり、花も極小になる。

そして最後にうどん粉病などのカビによる病気がある。

雨による根腐れや割れもあるか。

これらの問題を解決するため、うちではメロンは全て野外で栽培している。

ただし、ウイルス病はどうにもならないので蚊帳でアブラムシの侵入は防いでいる。

俺はスイカの栽培がやや苦手である、なぜならスイカは日本の植物ではないからだ。

対してメロンは国内に30種程度の野生メロンが存在していた。

中にはマクワウリをそのまま小型にしたようなものや、ネットがあるタイプ、そしてツル割れ病に強いものがあった。

存在していた、あった

この様に過去系で書いたのには理由がある。

かつて野生メロンを探索し、研究していた藤下典之という方がいたようだが

藤下さんが野生メロンを見つけた地を再び現在探してもほとんどがもはや存在していないという。

土地開発が進み利用価値が見出されなかった雑草は、埋め立てられ人の家や道路のアスファルトの下敷きにでもなっているのだろう。

ただ新たに宇久島で見つかったものもあるらしい。

藤下さんは野生メロンを食べて自分の排泄物を解剖し、メロンは糞媒植物であることを突き止めたという。

つまり野生メロンを食べて糞として排泄し、様々な土地に運んでくれる動物がいなくなり、酪農の衰退と共に野生メロンも衰退したということだろう。

そして酪農文化の残る宇久島では生き残ったと。

実際、メロンを栽培するときに牛糞をいれると良く育つが、ウ○コと共に生まれ○ンコと共に育つのが本来の姿であるメロンには相性が良かったということだ。

まぁ、それはさておき

俺はまず野生メロンの選抜からはじめた。

利用した野生メロンはJMU-4だが、これはククルビタシンの苦味が無く酸味も穏やかなので使いやすかった。

メロンには雌花に雄しべがある品種と、雌花に完全に雄しべがない単性花の品種があるが、単性花の方が品種改良しやすく

また自家受粉して無駄な果実を作りにくいので単性花が望ましかった。

JMU-4には雌花が両性花の個体がほとんどだったが、奇跡的に1本だけ単性花個体が出たのでこれを利用した。

交配相手はこの時点ではある程度糖度があればなんでも良かったのだが、丁度ホームセンターにナント種苗のキューピットがあったためこれを利用した。

野生メロンを父にした場合は野生メロンの緑皮と斑点を受け継ぎ、キューピットを父にした場合はキューピットの白皮を受け継いだ。

そして野生メロンを父にした場合は糖度が11〜12で爽やかな酸味があった。

キューピットを父にした場合は完全に味は普通のメロンだった。

ただサイズはどちらも60〜80グラム程度。

つまりメロンの交配では見た目と味は父に似て、糖度はランダムだが父寄りに、そして果実のサイズは両親の中間になることがわかった。

1本だけ栽培種並みの糖度がある個体がいたので、これを主体にした。

糖度が上がる理由は、離層が出来て果実が落下するタイプではなく、ぎりぎりまで完熟させることができるからだ。

逆に落下性があると果実の糖度を上げにくいということになる。

交配相手には暑さに強く夏でも糖度が下がらない菊メロンと、古いマスクメロンの1種であるオーゲンのハイブリッドのデルタを利用した。

なぜだか瓢箪型の果実をつける個体だったが、水を張った田んぼの土で育つほど根が強かった。

もう一つの交配として糖度が高く、香りが凄まじいイタリアのカンタロープ

ゼルビナッティ家のジョリーメロンと

野生メロンが父で糖度が低いが果実を沢山つける個体ベータを交配した。

そして生まれたのがまずデルタの子でマスクメロンのようにネットが出そうな個体イオタだ。

ただツル割れ病にやられまくり、果皮にも影響が見られたため、耐病性を獲得したとは言い難い個体。

うどん粉にも弱い。

次にこいつもデルタの子で、ネットはないがツル割れ病の影響が無く果実の肥大が良いエータである。

だがしかし菊メロンから受け継いだのか甘いが食感がシャリシャリで完全にマクワウリの味だった。

美味いんだけどね。

最後にジョリーメロンとベータのハイブリッド

ラムダ

こいつは最強だった。

まずベータのように野生メロン並みに沢山の果実をつける。

そしてジョリーメロンから受け継いだのか全くうどん粉病にかからない。

そしてツル割れ病の影響もない。

ただ味はそれほど美味くはなかった。

とりあえず耐病性としてはラムダは満足の個体だった。

そしてラムダの交配相手として選んだのが才色兼備というメロン

これはクイーンアンズポケットメロンと近いか同種のドゥダイム系メロンの遺伝をもつ。

パッションフルーツの香りを持ち、後味がグアバというトロピカルフレーバーのメロンだ。

だがしかし、そうして生まれた個体は開花が毎回雨と重なり、満足に受粉出来たのが10月だった。

かろうじて種子がとれたが

今年はこの遅れを取り戻すために苗を多めに作り備える必要がある。

まぁ、種子は出来たから研究は続けられる、台風や秋の寒さにさらされながらも種子だけはきちんと作ってくれたこの個体に感謝だ。

今年はイオタやエータの交配種子も蒔いてみよう。

ところで俺は野生メロンをもう1種保有しているが、これは香川県の女木島の野生メロンであるという。

野生ジャガイモ不明種と共にオークションで出品されていたものだ。

栽培したところ、やや病気に弱く、果実を無数につけることが取り柄。

味は苦酸っぱい。

こいつも何かしらに利用したい。

メロンは国内に無数の野生メロンが存在したが、栽培メロンもじつはいくつかの系統にわかれている。

まずマスクメロンと呼ばれるものはReticulatus種と呼ばれ、レティクルとは照準を合わせるためのスコープなどに書かれている十字線で、糖度が高いこと(14〜20)とメロンにリブがあるのが特徴、アールスメロンなどは成長するとリブが消えるが、オーゲンメロンなどはリブが残る。

次に、赤肉メロンの祖であるCantalupensis

いわゆるカンタロープだが、古典的なタイプはイボがあったり深いリブがあるためカボチャと見分けがつかない。凄まじい香りとそこそこの糖度(13〜15)、そして追熟しないとガチガチに硬い果肉が特徴だ。

そしてフユメロン

Inodorus 種にはハネデューメロンなどがある。

この3種に加えてMakuwa種つまりマクワウリ、世界のメロンのほとんどはこの4種とその雑種からなる。

実はマクワウリにも無数の系統があり、

金マクワ、銀マクワが目立つが、他に蛙瓜や甜掉牙のように緑に斑点があるものや

梨瓜や悠紀(菊メロン)のように白いものがある。

イタリアでは銀マクワと同系統とみられるものをカロセッロと呼び、ちょっと高級なキュウリといった感じで利用する。

他にもいくつかあるがWikipediaあたりで調べてくれ。

とりあえず俺は今年のメロンは失敗出来ない。

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