クサイチゴ、それは森の赤い妖精。
昔々、神様が宇宙を作り
その中に様々な星と最後に地球を作った
そして地球にいくつかの島を作り、そこに自分を模した人形を設置して完成としようと考えた。
だが、不注意で人形を落としてしまい
あわてて息を吹きかけてホコリを落とした。
神様はあわてていたのでその息が強すぎてしまい、人形に命がやどってしまった。
仕方が無いので一番お気に入りの島に命が宿った人形を住まわせることにした。
人形が1人で可哀想だったので人形が木彫りの人形を作ったらそれに命を与え、仲間にする力を授けた。
人形は沢山の仲間を作り、彼らは自分たちのことをヒコと呼んだ。
1人1人を区別するために生まれた木の名前を名乗った。
神様は彼らヒコの農作業を手伝わせるため、より大きな人形を作り命を与えオオヒコ(人間)を作った。
そんな感じのコロポックルの絵本があったと思うが、コロポックルが木々の精で、人間はコロポックルの代わりに農作業をするために生まれたのだとしたら。
人が農に感じる喜びはそこにルーツがあるのかもしれない。
では木々の精であるコロポックルはどこに行ったのだろう。
コロポックルはフキの下に住む人みたいな意味の名前だったと思うが、本土でフキというと高さ10センチくらいであるため、コロポックルは小人というイメージがある。
しかしアキタブキを知っている人もいるかもしれないが、北方のフキはめちゃデカいのだ。
コロポックルは北海道の話しだが、北海道にはアキタブキより更にデカい、馬よりデカいとされたラワンブキがある。
普通に人が住めそうな感じだ。
本当にコロポックルは小人なのだろうか?
まぁ、そんなことはどうでもいい。
コロポックルが彫った人形に命が宿るように
育てた作物から精霊が出てくるような、そんな世界になったら植物のことを考えない道路工事や、自然破壊などが無くなるかもしれない。
クサイチゴはそんな自然破壊の被害に合いやすい。
日陰でも大繁茂する生命力があるが、公園管理業者の下草刈りや身勝手な改植の被害に合いやすい。
公園管理業者はクサイチゴを引き抜きアジサイを植えたり、ニワトコを植えたりする。
にも関わらず自然保護しています、柵の中に入らないで下さい。
と元々自然に生えていたクサイチゴを引き抜いて作った自分達のお花畑を守ろうとしているのだ。
荒川でも河川敷の湿地を潰して野球チームたちのための駐車場にしているが、
同じように身近な自然を破壊するのはいつだって管理している業者や役所だ。
自然に生えているクサイチゴを見てまわると、クサイチゴには10cmでも開花してる個体からツル性のように1m近く成長している個体まで様々な形態がみられる。
実際クサイチゴを栽培していると日陰の個体は日向に出ようと長く伸びる。
日向の個体は横に広がるように育つ。
長く伸びた個体を地面を這わせるように育成すると大きい果実が実るが、果肉が薄く風船のようなものなのでホワホワとすぐ崩れる。
逆に、長く伸びた個体を縦に立たせて育成するとサイズは小さくなるがしっかりと引き締まった糖度が高い果実が実る。
日向で育つ背が低い横に広がった個体は地這にした長いものと同じく大きく柔らかい実がなる。
クサイチゴは甘い芳香があり、糖度は14〜18に達する、ラズベリーの糖度は8〜12程度だ。
ラズベリーの糖度は高い品種で16にまで達するが、日本の品種にそれほどのものは少ない。
つまり糖度で言えば優秀である。
ただ、ラズベリーのように硬さがないため輸送性が悪く食べごたえもない。
クサイチゴのようなバライチゴ型果実のキイチゴの流通がないのは、そうした果実の繊細さに問題がある。
クサイチゴにはカジイチゴとのハイブリッドと見られるキイチゴが2種ある。
それがトヨラクサイチゴとハチジョウクサイチゴだ。
トヨラクサイチゴはクサイチゴが大型化したようなキイチゴだが、葉を見てもハチジョウクサイチゴとほとんど区別がつかない。
八丈島のものをハチジョウクサイチゴ、それ以外をトヨラクサイチゴでも良いと思うが、
ハチジョウクサイチゴの方がトヨラクサイチゴよりもややカジイチゴ寄りのものが多い。
カジイチゴはクサイチゴよりも糖度が高く、糖度23に達する場合もある。
だが香りがまったくないためクサイチゴのが美味い。
トヨラクサイチゴやハチジョウクサイチゴはカジイチゴの糖度にクサイチゴの甘い香りを持つものが多く、親より味が良いことが多い。
ハチジョウクサイチゴはさながら赤いカジイチゴといった見た目の果実をつけるが、カジイチゴと異なり良い香りがある。
トゲの程度は個体により異なるが、茎にトゲがなく葉や葉柄にだけトゲがある場合が多い。
だがしかしクサイチゴとカジイチゴを交配すると両親より凄まじいトゲが出ることが多いのだ。
とすると、トゲが少ない場合はカジイチゴとクサイチゴが交雑した数世代後の個体で、トゲが多い場合にはカジイチゴとクサイチゴのF1と見るべきかもしれない。
ハチジョウクサイチゴとラズベリーを交配した場合、ラズベリーにハチジョウクサイチゴの花粉をつけた場合にはラズベリー型の果実になり、ハチジョウクサイチゴにラズベリーの花粉をつけた場合にはハチジョウクサイチゴ型の果実になる。
糖度も母方に似てしまうのが残念だ。
ラズベリーの果実にハチジョウクサイチゴの糖度であれば世界レベルだったかもしれない。
クサイチゴとカジイチゴのハイブリッドにリュウキュウバライチゴを交配すると、クサイチゴの香りにカジイチゴの糖度を持ちつつリュウキュウバライチゴの果実サイズを持つ個体が得られた。
説明すると長いので沖縄ハイブリッド系と呼ぶが、糖度20を超えたのは30個体中1個体のみだ。
開花が他より遅い個体だったのでレイトと名付けた。
沖縄ハイブリッドのレイトに更にラズベリーのグレンモイを交配したのがデュエだが、果実はほとんど沖縄ハイブリッドと変わらなかった。
ただバライチゴ系は果実が花托から浮くが、デュエは浮くものとヘタに密着しているものの2種類の果実をつける。
そしてバライチゴ系は花弁が巨大だが、デュエはややラズベリーに近づいて花弁が細く小さい。
逆にラズベリーの亜種でありラズベリー型の果実をつける国産野生キイチゴのエゾイチゴにクサイチゴの花粉をつけると
なぜだかクサイチゴ型の果実をつける個体が生まれた。
ラズベリーとハチジョウクサイチゴのハイブリッドの場合、種子親(母)とほとんど同じタイプの果実をつけたが、ラズベリー系のエゾイチゴにクサイチゴの花粉をつけた場合にはクサイチゴに似たのだ。
母に似る場合が多いが例外があると言うことか。
ただ、色素が異様に濃く、潰して濾しただけで真っ赤なソースになる。
果実も大きく、クサイチゴよりしっかりしており糖度も高い。
もしかしたら案外使えるやつかもしれない。
この個体は大雪山産エゾイチゴ(ヒグマ1号)に八重咲きクサイチゴの花粉をつけたものなので、子熊を意味するペウレプと名付けた。
そしてラズベリーとハチジョウクサイチゴのハイブリッドに10月末に咲くフユイチゴ系キイチゴのシマバライチゴを交配した。
葉が天狗の鼻に見えるのでベニテングと名付けた。
シマバライチゴは絶滅危惧種だが成長力が強く、開花したシュートが翌年以降も生き残るので10mを越えることがある。
ラズベリー系果実をつけるものを母にしているため、ラズベリー型果実をつけると思うが
ペウレプの例もあるためわからない。
両親共に花が無数に付き自家受粉するため、収量には期待できる。
長崎のシマバライチゴと八丈島のハチジョウクサイチゴの遺伝があるため暑さにも強いだろう。
イエローラズベリーのワインダーイエローと沖縄ハイブリッドのレイトの交配種子が発芽した
ワインダーイエローは甘いと有名なナンタヘーラより糖度が高く、糖度15に達する。
よく似たファールゴールドは糖度13程度だ。
レイトは糖度21に達するため、上手くすればかなり品質の良い沖縄でも育つラズベリーになるかもしれない。
クサイチゴから始まった交配がいずれ伝説になるかもしれない。