大日如来の化身とされる不動明王は天と地を睨みつけ、悪を滅する怒りの仏である。
東京のかつて滝があった場所には不動尊があり、不動尊が並ぶ通りは不動通りなどとも呼ばれる。
かつて不動明王は滝に現れたとされ、それを滝霊王などと呼んだ。
不動明王は動かずとも悪を正す力を持つが、太古の昔から人々に不動の人気を誇る果樹がブドウだ。
ただ不動とブドウを掛けたかっただけだ。
日本でブドウと言えば20年くらい前は巨峰かデラウェアだったが、巨峰は石原早生とセンテニアルのハイブリッドで
石原早生はキャンベルスアーリーの4倍体、センテニアルはロザキの4倍体であり、巨峰も4倍体品種である。
ところで気づいてないかもしれないが、画像は巨峰ではなく巨峰みたいに育ったエビヅルだ。
話しを戻そう。
巨峰が出来た当時、山梨ではマスカットベーリーAと甲州の多肥栽培が奨励されており、多肥で花芽が飛びやすい巨峰はあまり実がならない品種とされていた。
巨峰の育成者による巨峰の栽培法を知っていた澤登晴雄氏は、巨峰は多肥にしないほうが良いという話しを広め
そのおかげで誰もがよく知る程に巨峰は繁栄したという。
現在、ブドウは全て肥料はやらないほうが良いと考える人がいるが、それも澤登晴雄氏が広めた巨峰の栽培方法の概念が世に出回っているからだろう。
その考えに固執しすぎて窒素飢餓を起こしてしまえば元も子もないのだが、残念ながらそういう畑もあるという。
巨峰に次いでよく知られるブドウにデラウェアがあるが、画像はピノ・ノワールである。
日本のブドウ好きの方々はデラウェアは何ブドウか?と聞かれたときどう答えるだろうか?
あなたはデラウェアを何ブドウだと思う?
大概の人はアメリカブドウ Vitis labruscaと言うだろう、日本のWikipediaのラブルスカ種のページにもあるし。
デラウェアはオハイオ州のデラウェアから付けられた名前でデラウェア州じゃないと言われているが、
ニュージャージーから持ってきたブドウであるためニュージャージー州生まれなのだろうという話しや、
イタリアから持ってきたブドウであるため、イタリアのワイン用ブドウであるという話しなど色々な説があったようだ
デラウェアの話しを広めたトンプソン氏が見つけたときにはパウエルやヒースなどと呼ばれており、興味を持ったトンプソン氏が園芸雑誌の編集者に送った時に、
デラウェアで手に入れたためデラウェアと書いて送ったがために雑誌にデラウェアと書かれ、デラウェアとして広まったそうだ。
ワインにしたときの品質が良く、しばらくはヨーロッパブドウVitis viniferaとされていたが、すぐにアメリカブドウなどとハイブリッドであるという推測が広まったという。
実際どうなのか?といえば2015年のDNA解析で(Vitis aestivalis×Vitis labrusca)×Vitis viniferaと判明している。
ヨーロッパブドウでもアメリカブドウでもないVitis aestivalisは何か?といえばアメリカのブドウである。
アメリカにはアメリカブドウVitis labrusca以外に複数の野生ブドウがありその1つだ。
ヨーロッパのブドウ畑を壊滅に追い込んだブドウネアブラムシ(フィロキセラ)がアメリカ出身であることからもわかると思うが、アメリカはブドウ大国と言っても良いほど様々なブドウがある。
現在フランスで最も高価なワインであるロマネ・コンティのブドウですらフィロキセラの害を防ぐため、フィロキセラに耐性があるアメリカのブドウを元に作られた台木品種を台木にして接木している。日本のブドウ畑も同様だ。
リバーバンクグレープVitis riparia
サンドグレープVitis rupestris
などが台木品種の開発に利用された。
Vitis aestivalisはサマーグレープと呼ばれ夏に熟すブドウである、デラウェアが早生なのもVitis aestivalisの遺伝だろう。
ただし、デラウェアはヨーロッパブドウの遺伝もあるためか、実は主要な病気にはやや弱いのだ。
ちなみにデラウェアの原種は厳密にはVitis aestivalisの南方型であるVitis aestivalis ver bourquinianaだとも言われている。
意外にも200年近くの歴史がある。
歴史といえば画像のピノ・ノワールにも古い歴史がある。
ワイン好きならブルゴーニュの赤ワインがほぼピノ・ノワール1種であることを知っていると思うが、それだけの価値があるブドウだ。
日本ではサントリーの津軽ピノ・ノワール2013以外はクソみたいなのしか飲んだことがないが、俺はブルゴーニュワイン好きなのでフランス産ピノ・ノワールの発酵ブドウジュースはよく摂取する。
エジプトだかの学者が古代のブルゴーニュに来た時に、3種のブドウがあり丸い葉のブドウが最もワインに適していたという話しがあるようで、ブルゴーニュの神様アンリ・ジャイエはそれを根拠にして、ピノ・ノワールはブルゴーニュの野生のブドウから選抜されたブルゴーニュ由来の品種としていたようだ、
だがロマネ・コンティの本には古代ローマのアブロゲス族がアブロジカという寒さに強いブドウを作出し、それがブルゴーニュに持ち込まれたのではないか?という話しも出ていた。
貴族が金儲けのために作っていたボルドーワインに対してブルゴーニュワインは農民が生活のために作っていたワインだが、
ピノ・ノワールの色素が薄いためマセラシオンの技術が発達したおかげで作り手により味が異なり、更にはピノ・ノワールという単一品種のワインであるため環境により味の違いが出やすい。
多品種を混ぜ込むため味が安定しやすいボルドーワインと異なる奥深さがあるのだ。
ブルゴーニュには1つの枝に3芽以上残さない、一本の木に1果しかつけない。
などのスパルタなやり方で味を良くすると言う考え方もあり、ジュブレ・シャンベルタンでは低クラスのワインでもそういった手法がとられていることもあるそうだ。
ストイックな作り手が集まると言われるヴォルネイも同じかもしれない。
だがしかしこの画像はピノ・ノワールのように育ったエビヅルだ。
とはいえピノ・ノワールには様々な系統があり、小粒の方が高級とされる。
ロマネ・コンティなんかはさぞかし小粒クローンなのだろう、知らんけど。
いつだったかテロワールの死という話題があったが、ロマネ・コンティのピノ・ノワールを元に作った苗を使って別の国でワインを作ってもロマネ・コンティの味がするという話しだった、
そうなると人も気候も自然も土地も含めた環境を意味するテロワールの違いを語りたがる日本のワイン好きのイメージには間違いが多いのかもしれない。
考えてみればアンリ・ジャイエもクロ・パラントゥの畑に岩盤を見つけたときにダイナマイトで爆破したというし、環境の違いより品種と作り方が一番大切なのかもしれない。
個人的にはロマネ・コンティのように全房発酵したワインの場合には早く飲み頃を迎え、何年熟成しても同じベクトルで変化していくが、
アンリ・ジャイエのように完全除梗のワインの場合には熟成で大きな変化をしやすい。
アンリ・ジャイエの手法の1つに低温マセラシオンがあるが、低温にすることにより発酵を遅らせ果汁に発酵していない生のブドウの香りを付け、その後に発酵させるためアロマティックなワインになる。
ただアンリ・ジャイエの愛弟子で甥であるエマニュエル・ルジェが息子のニコラ・ルジェに“決して凝縮させようとするな”と言っているように、凝縮させないのがあの作りのコツなのだろう。
ワインは香水ではなく飲み物だ、いつ飲んでも美味いワインが一番素晴らしいワインだ
というアンリ・ジャイエの考えがルジェにより洗練された結果だろうか。
ちなみに先程のワインの画像はニコラ・ルジェのワインである。
ピノ・ノワールといえば、ブルゴーニュの白ワインはほとんどがシャルドネで出来ている。
シャルドネの良さや違いはピュリニー・モンラッシェとシャサーニュ・モンラッシェを飲み比べるとわかると思うが
ピュリニー・モンラッシェの方は強い蜂蜜の香りを持ち、シャサーニュ・モンラッシェはジャスミンの香りを持つ。
こういう隣り合う地域の違いを見るとやっぱテロワールやらミクロクリマやら言いたくなるのはわかるわ。
よくコンビニのシャルドネ飲んでシャルドネが好きという娘がいるが、シャルドネそんなもんじゃねぇから、飲んでみ?飛ぶぞ?ってピュリニー・モンラッシェ飲ませたい。
いや飲ませてください。
無理そうならベルナールマルタンノブレのエシェゾーで我慢するんで。
というのは1%冗談で話しを戻すと、シャルドネは香りも味も何処で作られたものでも素晴らしいワインが多い。
例えばオーストラリアの古いシャルドネもかなり味は良い、明らかに酸化してアップルパイみたいな香りがする20年物のオレンジワインだったがそれでも美味いワインだった。
シャルドネは白ワイン界の味覚の破壊者とも呼ばれるがそれだけの実力がある。
そんなシャルドネにはアリゴテという鋭い酸味が特徴のお兄さんがいるが、これはエスカルゴ料理用の料理酒に欠かせない、飲んでもエスカルゴによく合う。
日本では三重エスカルゴ研究所の働きでブルゴーニュのエスカルゴであるポマティア種のみ生体の輸入規制がないため、どっかの企業が三重エスカルゴ研究所以上に研究して流通を増やして欲しい。
料理人がサイゼリアのエスカルゴを褒めててスゲー!ってTweetを何度か見たが
…って感じ
まぁ、いいんだけどね。
デカいけどふにゃぷりなエスカルゴよりクチベニマイマイのがコリコリして美味いし。
育てやすく三重エスカルゴ研究所のポマティアより大きくなる国産のクロイワマイマイには期待したが、加熱したら粘液すごいし普通のカタツムリくらい縮んだ。期待ハズレだ、粘液落とせばコリコリで美味いけど。
一番美味いのはコシタカコベソマイマイやコベソマイマイだ。
餌をよく食べるので餌付けも楽だ。しかもほんのり赤いので、真っ白なポマティアやサイゼリアのグリのような黒いエスカルゴよりも食欲をそそる見た目に仕上がる。
三重エスカルゴ研究所でいいから養殖してくれ、俺にだけくれればいいから。
ちなみにグリ種のエスカルゴは問答無用でプティ・グリだと思ってる人がいるが、ポマティア種並みに大きくなるグロ・グリ種も存在する。
養殖の難易度も変わらないのでみんながプティ・グリだと思ってるものがグロ・グリ種である可能性は高い。
何の話ししてたっけ?
あぁブドウか。
シャルドネな、シャルドネはピノ・ノワールとグーエ・ブラン(グアイス・ブラン)の子とされているが、親のグーエ・ブランは良いワインが出来ないとされて栽培が禁止され、ほとんど滅びている。
そんな落ちこぼれだが、アリゴテやボジョレーのガメイなどもピノ・ノワールとグーエ・ブランの子とされている。
落ちこぼれてしまったが、素晴らしい子を沢山残した偉大な品種と言えるだろう。
最高の白ワインブドウであるシャルドネも元は落ちこぼれから落ちてこぼれた種から育ったと考えるとどんなに落ちこぼれても希望はあるような気がするだろう。
ボジョレーと言えば日本ではボジョレーヌーボーが思い浮かぶだろうが、
ボジョレーヌーボーはぶっちゃけ俺は一杯しか飲めない、吐き気がする。
ボジョレーのワインは本来はピノ・ノワールに負けない素晴らしいワインなのに、ボジョレーヌーボーを売り出すことにより価値を下げているように思う。
ボジョレーのワインはピノ・ノワールのようなイチゴジャムに似た風味があるが、イチゴジャムというよりイチゴミルク飴のような若干ファンシーな感じで軽やかさに違いがあるのが魅力だ。
味もブルゴーニュワインっぽい味がする。
だが新酒であるボジョレーヌーボーは密閉発酵特有の酢酸イソアミルによるバナナの風味がある以外には、若い赤ワイン特有の荒いタンニンと酸味があるだけのもの。
だがしかし画像の2004年のボジョレーヌーボーは去年2021年に飲んだものだが、綺麗に熟成してかなり良いワインになっていた。
15年熟成したボジョレーヌーボーはもはやヌーボーじゃないがきちんと熟成して美味い。
カーヴを持ってる人は安いボジョレーヌーボーを買いだめして長期熟成してから飲むのも有りかもしれない。
カーヴ持ってる人は金持ちだからそんなケチなことはしないか。
アンリ・ジャイエの本では
確かピノ・ノワールの新芽を食い荒らす害虫が流行った年に、ブルゴーニュ公が害虫に負けないガメイを見つけてきて広めたとしていた。
その後、ピノ・ノワールと異なり副梢にも果実をつける豊産性に農家は喜び沢山植えたという。
だがしかし実をつけすぎるため凝縮感が無い、色の薄いワインしか出来ないのでワイン用に利用されなくなり、ワインではなく農家が畑で飲む用の微炭酸のジュースに利用されていたようだ。
その後どんどん引き抜かれ、追いやられ、花崗岩土壌で栄養不足になりピノ・ノワールが上手く育たないボジョレーに辿りついた。
が、栄養不足になることで強すぎた樹勢が衰え、逆に果実が素晴らしいものになり、良いワインが作られるようになったという。
昔、シャルドネを北海道の農家に注文したとき、なぜだか貴腐ブドウが届いた。
しかもシャルドネじゃなく明らかに香りと形がピアレス。
シャルドネを選ぶような人は詳しいだろうから、珍しい貴腐ブドウの価値がわかるだろうと思い送りました。
と、手紙に書いてあった。
しかもオマケですってカビたトマトが一杯入ってた。
つまりカビたブドウとカビたトマトが箱いっぱい届いたわけだ。
そして翌日
「70種類のブドウ育ててる70歳のじーさんですっ!!」
って電話来て爆笑。
おもろかったからゴミ送ってきたことは許すことにした。
北海道のブドウ農家は危険かもしれない。ラベンダーとベランダの区別がつかない俺の母方の祖母も北海道人だ。
なんか凄いホテルに野菜卸してるじーさんらしい。
その時の俺はピアレスをまだ知らなかったが、丁度その年にフルーツグロアー澤登のピアレスを買って食べたので、70歳のじーさんが送ってきた妙に香るシャルドネの偽物がピアレスだったことに気付いた。
それで気付くくらいピアレスは凄まじい香りなのだ、しかもシャインマスカットに負けないくらい甘い。アメリカブドウ由来の香りだがナイアガラのようなクセのある香りではなく、ただひたすらに透明感のある甘い香りがする。
ピアレスは澤登さんの作った品種の中で最も素晴らしいと思う。
澤登さんの品種ではブラックオリンピアをよく見るが、これは巨峰の子でほとんど巨峰と変わらない。
巨峰より食べやすく果肉がしっかりして糖度も良い、オリンピアのが美味いけどすぐ売れるのか滅多にない。
ちょっと期待していたのがワイングランド
澤登さんはヒマラヤの野生ブドウなどを用いて国産のワイン用ブドウを作ろうとした人だが
澤登さんのブドウ品種でよく聞くのはオリンピアと小公子のみ。
ピアレスは俺が広める。
ワイングランドは何度か食べているが、糖度が低く良いワインになるかは疑問である。
もし本当にワインに優れるのだとしたら本来の栽培方法とは違うものが流通しているのかもしれない。
小公子を手に入れたのは大分昔なのでガラケーの画像なため画質が悪いが、搾ってジュースにした時点でドロドロでジュースというかすでにジャムなんじゃないかくらいの濃さがあった。
小公子は澤登さんの集大成のような品種とも言われるが、これは面白い。
ブドウ好きならピアレス、オリンピア、小公子には触れておくと良いだろう。
ピアレスはシャインより美味いと思うが、シャインも黄色く完熟すれば美味い。
TwitterでアニメアイコンのJAふえふきの農家から黄色いシャインは甘いだけで美味くない!自分は沢山シャインを食べてるから間違いない!
と絡まれたが、黄色いシャインの魅力とマスカットとはどうあるべきかを丁寧に説明してさしあげたら自称JAふえふきのシャイン農家さんは翌日アカウントを消していた。
黄色いシャインは素晴らしいと納得してしまったのだろう。
マスカットとは2000年前よりその特有の甘い香りと高い糖度が魅力とされてきたため、ひたすらに甘い香りとひたすらに甘い味を追求するのがマスカットとしての正しい形なのだと俺は思う。つまり酸味があっては間違いなのだ。
それを言うと緑の状態でも美味いシャインはありますよ!晴王とか!とか言うけど、じゃあその晴王が黄色く熟したらどこまで香りが強まり糖度が上がるのか?マスカット好きならそこを見るべきだ。
なんなら東京の俺からすれば晴王なんかその辺で買えるからよく食うわ。
晴王は緑でも糖度23ある。
でもおつとめ品で600円になった小玉の黄色いシャインのが美味い。
シャインの魅力はスチューベンから受け継いだショ糖が多いという糖のバランスと、マスカットと呼べる強さのマスカット香。そしてマスカットなのにジベレリンで種無しになるという特性だ。
そもそもマスカットはジベレリンで種無しにならないという特性があるのに、シャインはジベレリンで種無しにできるということで広まったのだろう。
ショ糖が多いと強い甘みを感じた後にスッと消えるため食べ飽きない。
澤登さんは北海道の帯広で毛の生えない謎の野生ブドウ“中島1号”をみつけ、ロシアの研究機関に同定を依頼したらアムレンシスと同定されたようだ。
のちにアムレンシスではなくタケシマヤマブドウとされたが、画像は中島1号ではなく本物のアムレンシスである。
マルシェ青空で種子が売っていたものだ。
アムレンシスは−36℃にも耐える氷河期の生き残りのブドウとされる、ロシアだか中国には両性花の品種があるらしいが日本では一切見かけない。
アメリカには無数の野生ブドウがあるが、同様に中国にも無数の野生ブドウがある。
いずれアメリカと中国の野生ブドウを全部集めたい。
アメリカブドウはヨーロッパブドウより寒さに強いため、複数のアメリカブドウとヨーロッパブドウの雑種であるセイベル13053 “カスケード”を北海道では栽培していた。
元々セイベルの名がつく品種は、フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)の害を接木ではなく品種改良で解決しようとしたアルベールセイベル氏が作出した品種であり、フィロキセラ耐性があるアメリカのブドウをワインの品質が良いヨーロッパブドウに交配したもの。
その選抜種の清見に前述の中島1号を交配したものが山幸と清舞だ。
画像は清舞である。
現地では山幸推しのようだが、ワイン好きからすると絶対に清舞の方が素晴らしいと思う。
エレガントな作りの場合には清舞のワインは、シチリアのピノ・ノワールと呼ばれるネレッロ・マスカレーゼに近いワインになる。
清舞も北海道のピノ・ノワールと呼んで良いかもしれない。
ただ圧倒的に山幸のが栽培が楽なのだ、山幸は鉢植えでも十分に実をつけるほどで管理が楽なのである。
楽だから味で勝る清舞よりも山幸を推してるのか?と思うくらいに。
野生ブドウハイブリッドと言えば、有名なのはヤマソービニオンだろう。
ヤマブドウとカベルネ・ソーヴィニヨンのハイブリッド由来の品種だ。
ヤマブドウの様に酸が多く完熟寸前でやっと糖度が上がるため、ブドウが色づいただけで収穫してしまうと酸っぱいだけだ。
ビネガーにするならそれで良いけど。
ただ完熟すれば糖度25を超える。
ワイン用ブドウは生食用と違って渋くて酸っぱいと思ってる人はいるだろうが、実際は逆にワイン用ブドウのが甘い。
美味いブドウからしか美味いワインはできない。
ではヤマブドウはどうだろう?
ヤマブドウは完熟しても酸が強く、基本的には酸っぱいワインになる。
販売されているヤマブドウワインについてのソムリエのコメントには、よくキャンディーの香りと書かれているが、
ヤマブドウワインの特徴はスイートポテトの香りだ。
つまり芋臭い。
小粒で粗着なヤマブドウはワインに向くと言う人はいるが、基本的には芋臭い酸っぱいワインになってしまうため向いていない。
糖度もほとんどが12〜18でワインにするには微妙なラインである。
ただ、ヤマブドウの中でも月山1号は糖度が高く、少ししぼんだ果実なら糖度30を超える。
月山1号のワインは芋臭い場合もあるが、芋臭くないワインになっている事が多い。
ヤマブドウワインを試す場合は、月山1号から飲んでみて月山1号をヤマブドウワインの基準にすると良いだろう。
ヤマブドウの栽培方法についてだが、ヤマブドウは木に巻き付き、それを登りきって新梢が下垂するようになってはじめて花をつける性質がある。
つまり、上ヘ成長するうちはヤマブドウの果実は実らないので、コルドンのように水平に仕立てるか、棒を登らせて翌年新梢を下垂させるかの工夫が必要になる。
ただし水平に仕立てる場合には緩んだ部分があると芽が飛ぶので、きっちり水平に仕立てることと芽傷を入れるなどの工夫をすると良い。
そして忘れてはイケないのはヤマブドウにはオスとメスがあると言うことだ。
ただ、ジベレリン処理によってオス木の花にも果実がつくことが分かっているようなので、気になる人は実験してみると良い。
ヤマブドウの花粉は風媒花とする人々もいるが、2〜4メートルしか飛ばないこともあるため、虫媒花なのだろう。
虫は大切に。
ヤマブドウ交配種には、知らない人も多いが国豊シリーズがある。
画像は国豊3号だが、何号だったかヤマブドウ系には珍しく白ブドウの品種も存在する。
これだけの大実で、かつヤマブドウ交配種にも関わらず糖度25を超える。
生食用にもできる品質である。
ヤマブドウ、ときたら語らなくてはならないのが先程から活躍しているエビヅルだ。
古事記にもエビカヅラの名前で出るため、もしかしたら魚介のエビはエビヅルが由来でエビの名が付いたのかもしれない。
メスのエビが腹に付けている卵がブドウに見えなくもないし、エビの目玉もブドウっぽい。
ヤフオクなどでヤマブドウの名前で出品されていることもあるエビヅルだが、ヤマブドウは小苗でも人の顔ほどのサイズの葉をつけるのに対し、エビヅルは手のひらサイズより小さい場合が多い。
日本で最も広く分布するブドウであるため数々の変種があるが、エビヅルの仲間には特異的な能力がある。
それが無限着花性だ。
普通ブドウは新梢に数個花をつけるか、新梢とそこから出た副梢とに数個花をつけるが、
エビヅルの場合には新梢に花をつけ、またそこから伸びた副梢が伸び続ける限り無限に花が付き続ける。
一本のエビヅルに数百の果実が着くこともあるのはそれが理由だ。
ただしエビヅルは冬眠するため、実質的には無限ではない。
沖縄に自生するリュウキュウガネブはエビヅル同様に無限着花性があるが、冬眠しないので本当に無限と言える。
だが、遺伝的には絶滅危惧種のシラガブドウに近いとされており、エビヅル系と異なる何らかのブドウが原種になっているか、シラガブドウの近縁種から突然変異でリュウキュウガネブが生まれ、そこからエビヅルが発生したのかもしれない。
画像は上がリュウキュウガネブの新しい葉で、下が絶滅危惧種のシラガブドウの新しい葉である。
新しい葉はなんとなく似ている。
シラガブドウの葉は成長するとハート型になる、アムレンシスと同種とする話しもあったが全然違う。
そもそも枝が木質化するのが遅いため、関東だと冬に多くの枝を失う。
寒さにかなり弱いと言えるだろう。
そして水辺のブドウであるため、乾燥にも弱い。
ワインにするとタクアンの香りがすると言われるが、糖度は20を余裕で超えるためブドウ自体の味は良い。
リュウキュウガネブといえば香川大学の望岡教授がマスカットと交配して作った香大農R−1というワイン用ブドウがある。
望岡教授に問い合わせて一房頂いたが、ロザリオビアンコのように味はマスカットなのにマスカットの香りがないブドウ。
ロザリオビアンコは過熟になればマスカットの香りがかすかにするが、香大農R-1はどうなのだろうか。
ワインを飲み慣れない女性でも飲みやすい機能性を持つワイン用ブドウを作る目的で生まれたというが、
確かにリュウキュウガネブはアントシアニンの量も種類もトップクラスだが、リリースされているワイン、ソヴァジョーヌ・サヴルーズを飲んでみると飲みやすい作り方はされていない。
色素は強いが、タンニンもしっかり出てしまっている。
ただ風味は甘め。
イタリアワインに詳しい人にしかわからないと思うが、香りのないラクリマ・ディ・モッロダルバだ。
ラクリマのワインはバラのワインとも言われるが、マスカットの香りがありつつしっかりしたタンニンもある不思議なワイン。
ただソヴァジョーヌ・サヴルーズにはマスカット香は感じなかった。
作り方によっては化けそうな品種である、あときちんとした名前を付けてやって欲しい。
ブドウといえば日本では山梨のイメージだが、最近改良品種であるBKシードレスに押されて姿を消しつつあるマスカットベーリーAというブドウがある。
これは日本で最も古い改良品種の1つだが、実は勝海舟が関係しているブドウなのだ。
確か勝海舟に資金援助していた川上家の当主が亡くなり、息子の川上善兵衛が若くして当主になった時に、勝海舟が海外で見たブドウ酒の話しを伝え、日本でもいずれワインが一般的になるはずだからとブドウの栽培を勧めたという。
そうして川上善兵衛が作り出した品種の1つがマスカットベーリーAだ。
マスカットベーリーAにはマスカットの香りは無いが、特徴的なスパイシーな風味があるワインになる。
トマト料理や癖のあるカレーなどにも合いそうだ。
マスカットベーリーAは、マスカットハンブルクとベーリーのハイブリッドだが、
マスカットハンブルクの親であるブラックハンブルクはドイツで有名なトロリンガーのことだ。
トロリンガーは黒ブドウだが、ドイツの最高傑作である白ワイン用品種、ケルナーの親である。
つまりマスカットベーリーAは意外と由緒正しいワイン用ブドウの系統とも言える。
ベーリーがアメリカブドウだからアメリカブドウの関係したブドウのワインは飲みたくないという無知な人もいるが
ベーリーは純粋なアメリカブドウではない。
シャルドネやガメイ、アリゴテなどと同じくピノ・ノワールとグーエ・ブランの子とされる“Knipperle”にVitis ripariaとVitis rupestrisのハイブリッドである“Millardet et de Grasset”を交配したアルザスのTriompheの子孫である。
つまりマスカットベーリーAはセイベル品種並みに複雑な交配のワイン用ブドウなのだ。
川上善兵衛曰くブドウは母に樹勢が似て、父に果実が似るという。
実はうちにも4歳の頃に親父が巨峰として植えたベーリーAがある。
親父は巨峰と言い張るが、ラベルに完全にベーリーAと書いてあったのだ。
そうして小学生の頃にベーリーAを調べることにより、ワイン用ブドウに興味を持った。
ベーリーAのオススメの食べ方はやはり冷凍である。
ベーリーAの冷凍ブドウは他のブドウと異なり炭酸が入っていないのに炭酸を感じる。
画像は日本で最も古い栽培ブドウである甲州のうち、最も古い株である“甲龍”だ。
山梨の指定文化財であるため甲龍は大和葡萄酒でしか増殖を許されていない。
事務の美人の菊島さんの計らいにより大和葡萄酒のハギー社長に5本苗を頂いた。
ただ、経理のおばちゃんにめっちゃ暴言を吐かれた。
実は現在大和葡萄酒で勧めている京都の古代ブドウ“聚楽”の栽培コンサルタントを頼まれ、頼まれた翌日には大和葡萄酒に伺ったが
社長に呼ばれて行ったのに経理のおばちゃんにまためちゃくちゃキレられたのだ。
お局様というやつだろう。
ゴールデンボンバーじゃないが、大人にうるさく言われるのは嫌いなので社長には悪いがこの仕事は断った。
知っている人もいるかもしれないが、甲州の若い枝にはトゲがある。
そして、甲州は日本のブドウにも関わらずヨーロッパブドウそのもののような感じである。
つまり甲州にはいくつもの謎があったのだ。
色々な説があったが、甲州の起源について自分の推測で詳しく調べた人がいた。
それがまたしても澤登晴雄氏である。
シルクロード経由だとして、中国にヨーロッパブドウが初めて入ったのはいつか?
から推測し、アフガニスタンやウイグルのあたりだと目をつけ、
実際に自分で行って甲州の源流を探したのだ。
ヨーロッパブドウには、原種に近いアンタシアーティカ亜系のブドウと、それがカスピ海方面の野生種と交雑しながら広まったカスピーカ亜系のブドウがあるとし、
甲州と同じカスピーカ亜系の特徴を持つブドウを探していた。
アンタシアーティカ亜系のヨーロッパブドウはサクサクした乾燥地帯のブドウであり生食用である。
カスピーカ亜系のブドウは逆にみずみずしい柔らかい果実で、ワイン用に利用されるタイプ。
が、イスラム教が広まり禁酒になっていたためか、アンタシアーティカ亜系のブドウばかりが出回っていたという。
だがしかし民家の家庭果樹として甲州に似たブドウを見つけたようだ。
それがウイグルの和田地区の名前を冠する和田紅(ホータン・ホン)だった。
そしてそれが禁酒の教えで追いやられたのか、その木を愛する人が持ち出したのかして、中国を通り日本に来たのだろうと結論づけた。
多分そんな感じだった。
実際遺伝的に調べるとヨーロッパブドウに中国の棘葡萄が交雑し、更にヨーロッパブドウが戻し交配されたものだと判明したそうで。
自分の推測から答えを導き出した澤登さんの考えの裏付けになったのは面白い。
甲州の研究ではアフリカのステンレンボッシュ大学の提唱する栽培法で糖度26まで上がるというが、基本的には糖度18程度である。
イタリアの糖度が足りない地ブドウで行われるアパッシメントやレイトハーヴェストなどを駆使すれば更に良いワインが増えるのでは無いだろうか。
という雑談でした、以上。